Discovery Hackathon 2020開催レポート<後編>
今年は完全オンラインでの開催となったDiscovery Hackathon 2020。
「『あたりまえ』をハックせよ」というテーマに沿って、60名の参加者が社会を変えるサービスやプロトタイプの開発に挑戦しました。
オープニングからプロトタイプ制作までを紹介した<前半>に続き、<後半>の様子をお伝えします。
インスピレーショントーク#02
自分の手を動かすことから、革命が始まる
プロトタイプ制作開始から4時間が経過した夜7時。ここで2人目のインスピレーショントークが行われました。
お話をしてくださったのは、『ハードウェアハッカー~新しいモノをつくる破壊と創造の冒険』の著者でハッカー、メイカー、オープンハードウェアアクティビストのAndrew “Bunnie” Huangさん。
シンガポールのアトリエから登場したBunnieさんは、ハードウェアをハッキングすることの楽しさや気軽さ、そして可能性について話してくださいました。たとえばスマートフォンでも周辺器具をつけることでコントローラーになるように、ハードウェアを変えていくことでその役割を拡張し、限られていた可能性や領域を広げていくことができるといいます。
またハードウェアを変えていくことはハードルが高いことのように考えがちですが、Bunnieさんは壊れたものやジャンクショップで購入したものを、自分で手を動かして解体しながら学ぶことが多いそう。世界的に有名なハッカーとなったBunnieさんも、参加者とそう変わらない環境の中から自身の道を開拓してきたことが伝わってきました。
またBunnieさんは、参加者からの質問にも丁寧に答えてくださいました。
Q:回路や筐体(きょうたい)など色々なものがデータさえあれば3Dプリンターで作れるようになってきている中で、すべてのハードウェアがデータだけ共有されれば再現できるような時代(データだけがやり取りされる時代)は来るのか?そのとき問題になりそうなことは?
A:たしかに3Dプリンターやデジタルファブリケーションは普及しています。とはいえ、まったく同じものを量産するのは難しいのです。もうひとつ、生活のなかで使うことを考えた時、耐久性を保証したり製品としての品質を満たすことができないところもあります。ここはまだまだ可能性がある部分でもあると思いますよ。
メンタリング
チームの課題にメンターがアドバイス
世界的なハッカーから刺激をもらった参加者たちは、審査員やテクニカルメンターによるメンタリングタイムに入ります。チーム毎に抱えている課題をメンターに相談し、解決に向けたアドバイスを受けました。
さまざまな意見が飛び交ったメンタリングタイムが終わったのは夜10時過ぎ。翌日の発表に向け、作業は夜遅くまで続きました。
プレゼンテーション
2日間の成果を発表
2日目の朝は、8時半にスタジオから流れてくる「おはようラジオ」からスタートしました。
プレゼンテーションに向け、作業はラストスパートに入っていきました。
そして、いよいよ迎えた15時。プレゼンテーションでは15チームがアイデアの紹介とともに、つくりあげたプロトタイプが動く様子を動画で紹介しました。
実用的なものから感性に働きかけるようなものまで、アイデアはさまざま。作品が生活の中でどう活用されるのか、工夫をこらしたプレゼンテーションが行われました。
結果発表
栄冠をつかむチームは?
今回、審査員を務めていただいたのは、こちらの5名です。
審査基準はこちら。
- テーマとの親和性
- 「『あたりまえ』をハックせよ」のテーマにあった作品である
- COVID-19によって、大きく変容する日々のあたりまえをテクノロジーによってチャレンジする作品であるか
- 新しさ
- 問い立て・着想・アイデアは新鮮であるか
- 驚きや感動を生むアイデアであるか
- 熱量
- オンラインハッカソンらしいチームワークができているか
- 制作プロセスが設計されているか
- 学生の姿勢に情熱は感じられるか
- 実現可能性
- 既存のデバイスなどをうまくつかっているか
- 技術的視点からみたときに実現可能性が高いか
審査会では当初の予定時間を超え、白熱した議論が交わされました。
接戦を勝ち抜いて最優秀賞を手にしたのは、「三人称提示システムの実現」を開発したチーム「くりらぼ」の4人です。
「三人称提示システムの実現」は、コロナ禍で遊びが少なくなった今、視点のあたりまえをハックするというもの。人に追従する三人称視点のカメラによって日常をゲーム化しました。
審査員長の江渡さんのコメント
「このチームが素晴らしかったのは、カメラという一般的に普及したデバイスを活用しているところです。一見簡単そうだけれども、三人称の視点が成り立つように実装するのは大変だったと思います。2メートルの高さから見下ろすという仕組みを動くところまでつくり、ゲームに落とし込んだところがいいですよね。ゲームで見慣れた風景にまさしく自分が入り込めるようなものをつくったのが、アイデアとしても作品としても、大変素晴らしかったです。新しいテレビ番組や映像制作の形と親和性があるような気がして、今後も楽しみにしています。」
チームのみんなから喜びの声
「達成感が得られたらいいなと思って参加したのですが、受賞できて嬉しいです。ありがとうございます!」
「最近工作する機会がなかったので、楽しかったです。やっぱり工作って楽しいなと改めて感じることができました。」
「チームの3人がいたおかげでできたと思います。運営のみなさん、一緒に戦ってきたみなさんにも感謝したいです。」
「ゲームのほかにもサッカーなど、他のことへの展開も考えながら生活していきたいと考えています。ありがとうございました。」
全チームのプロトタイプ紹介はこちらから。
結果発表のあとには、参加者同士がチームを超えて話す懇親会の時間も設けられました。
参加者のものづくりに対する情熱が伝わってくる、あっという間の2日間となりました。
2日間お疲れさまでした!